7_借信
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 民法612条は,その第1項において,「賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸することができない。」と規定し,第2項で,「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは,賃貸人は,契約の解除をすることができる。」と規定している。 この点について最高裁(昭和28年9月25日第二小法廷判決・民集7巻9号979頁〈裁判例27〉)は,借地権の無断譲渡の事例において,「元来民法612条は,賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ,賃借人は賃貸人の承諾がなければ第三者に賃借権を譲渡し又は転貸することを得ないものとすると同時に,賃借人がもし賃貸人の承諾なくして第三者をして賃借物の使用収益を為さしめたときは,賃貸借関係を継続するに堪えない背信的行為があったものとして,賃貸人において一方的に賃貸借関係を終止せしめ得ることを規定したものと解すべきである。したがって,賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益を為さしめた場合においても,賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては,同条の解除権は発生しないものと解するを相当とする。」と判示し,賃貸人の解除権が制限される場合を示した。 その後,借家において,最高裁(昭和39年7月28日第三小法廷判決・民集18巻6号1220頁)は,賃料不払いと家屋改造工事の事例で,いずれも賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたとは認められないとして,賃貸人からの解除を否定している。 この「背信性基準」や「信頼関係破壊の法理」は,戦後から今日に至るまで,脈々と判例の中に流れている法理ともいえるが,民法612条については,債権法改正の基本方針の中で,次のような提言がなされている(下線部分)。第1無無断断転譲貸渡はじめに第1編借地契約における信頼関係の破壊

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