以下は,無断転貸,無断譲渡による賃貸借契約の解除について,肯定した判例と否定した判例である。1 土地賃借権の無断転貸・無断譲渡等(1)解除を肯定した事例東京地判昭和31年6月25日(下民集7巻6号1635頁,判時88号13頁)1 土地賃借権の無断転貸・無断譲渡等/(1)解除を肯定した事例 3第1無無断断転譲貸渡裁判例1土地賃借権の無断転貸ないしは無断譲渡と信頼関係の破壊 「右のように被告Aの先代から訴外Bに本件土地の賃借権が原告に無断で譲渡されたものであり,原告主張のように原告から無断転貸又は譲渡を理由に解除の意思表示をなしたことは当事者間に争のないところであるから,撰択的な理由による解除の意思表示であるけれどもその1つの事由が認められ,又事実関係が不明確なため撰択的にしか主張できない事情にあったことが証人等Cの証言,原告本人の供述で認められる本件においては右解除の意思表示は有効なものと解する。本件土地賃貸借契約は原告主張のように昭和27年10月31日解除されたものである。被告等は右契約解除が権利濫用であると主張するが賃貸借契約関係において,無断転貸又は賃借権無断譲渡が法律上契約解除原因とされているのは,かような賃貸人の賃借人に対する信頼が失われるような事態が起った場合に賃貸人からの契約解除を認めることが契約の性質上適当だからであって,無断転貸又は無断賃借権譲渡によって一旦賃貸人の賃借人に対する信頼が破られた場合には該転貸借又は賃借権譲渡が既に終了した後であっても,再び信頼関係が回復されたと見られる特別の事情がない限り賃貸借契約を解除するのに何等支障はなく,本件においてはこのような特別な事情を認めるに足る証拠はなく,しかも,前示認定のように,原告は当初よりBの本件土地使用承認しなかったものであり,仮りに本件家屋の所有が元の賃借人である被告Aに帰属し,本件土地の賃借権が同被告に復帰したとしても前認定のように現実の使用者は同被告ではなくて第三者の間を転々としているものである以上,Bへの無断譲渡を理由にする原告の該契約解除を権利の濫用と見るべきものとはいえず,他に権利の濫用と認むべき事実も認められないから,本件賃貸借契約は有効に解除されたものであり被告の右主張は理由ないものである。」第1 無断転貸・無断譲渡
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