4 第1編 借地契約における信頼関係の破壊最判昭和34年7月17日(民集13巻8号1077頁,裁判集民37号359頁)最判昭和39年12月25日(裁判集民76号681頁,判時400号21頁)裁判例2【参考判例】賃借地の一部無断転貸と権利の乱用 「ところで,原判決の確定するところによると,本件土地310坪6合5勺のうち上告人において第1審相被告A,同Bにそれぞれ建物敷地として占有使用させている部分の面積は合計30坪であるというのであるから,割合にして僅か10分の1弱にすぎないことは所論のとおりである。 しかし,原審は,なお,本件土地は道路に沿った海岸の波打ぎわに存する砂地で,前記30坪及び上告人所有建物の敷地12坪を除いた残余の部分はとり立てていう程の用途に使用されているものでない事実をも認定しているのであって,このような事実関係のもとでは,たとえ前記A及びBに占有使用させている部分の面積が本件土地の総面積に比し僅かであっても,右占有使用につき賃貸人たる被上告人の承諾がない以上,被上告人は本件土地全部につき上告人との間の賃貸借契約を解除し得るものと解すべく,右解除権の行使をもって権利乱用というのはあたらない。」裁判例3無断譲渡と背信的行為 「ところで,賃貸借契約の解除がいったん有効になされた場合には,その後に生じた事情によってその効力が左右されないものと解すべきところ(最高裁昭和25年(オ)第120号,昭和28年4月9日第一小法廷判決,民集7巻295頁。同昭和27年(オ)第354号,昭和28年5月7日第一小法廷判決,民集7巻525頁参照),前示のように,上告人Aが本件賃貸借契約を解除した当時は,被上告会社と訴外会社との合併についてはその話が持ち上ってはいたものの,いまだその話合が具体的にまとまってはいなかったというのであるから,その後に行われた合併の事実をもって,右解除の効力を判断する資料とすることは許されないところである。しかるときは,右解除当時の前示事実関係のほか,原判決は,(1)被上告会社が本件建物における映画館経営を引き継いだ際,あらたに支配人となったBが本件土地の賃貸人たる上告人Aに面接して右引継の旨を述べて挨拶をしたとき,同上告人が特段の異議を述べなかったこと,(2)本件建物の所有権移転登記を受けた被上告会社が昭和24年7月中坪当り21円の割合による賃料を持参したが,上告人Aは従前の坪当り7円を25円に値上することを要求して受領を拒絶したこと,(3)被上告会社は,訴外会社とは比較にならぬ大資本の会社であり,支払能力ないし信用の点においても格段の開きがあることは公知の事実であること,(4)訴外会社々長Cは従前賃料の支払を滞ったことがあって信用がおけなかったことなどを認定判示しているが,これらの事実関係をすべて併せて考えても(かえって,前示のように,本件賃貸借には無断転貸禁止条項が付せられていたことを想起すべきである。),本件解除が本件土地の無断譲渡を理由とする以上,賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるものとして右解除を無効とすべき事由は到底見出すことができない。しかるに,原判決は,本件
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