福井地判平成4年2月24日(判時1455号136頁)東京高判平成6年3月28日(判時1505号65頁)甲事件・乙事件あり(1)解除を肯定した事例 77第2賃料等不払い裁判例108著しい低額の地代の供託と信頼関係の破壊 「借地法12条2項にいう「相当卜認ムル」地代とは,客観的な適正額ではなく,借主が自ら相当と認める額であると解すべきであるが,その供託額が適正額に比して著しく低額であるときは,同項にいう相当額の供託とはいえないものと解される。 これを本件についてみるに,Aないし被告Bは,昭和50年1月分から平成元年8月分まで,14年間余にわたって,月額金2万1822円(坪当たり金150円)宛の供託を続けたものであるところ,右供託額は,既に昭和50年度の時点で公租公課の約57パーセント(26万1864円÷46万1934円=0.567),適正賃料額の37.5パーセント(26万1864円÷69万8304円=0.376)という著しい低額であったほか,その比率は,順次低下していき(例えば,昭和61年度は,公租公課の約30パーセント,適正賃料額の20パーセントである。),平成元年9月分から供託額を倍増して月額金4万3644円としたものの,著しく低額であるという評価自体に影響はなく,結局,右一連の供託は,借地法12条2項にいう相当額の供託とは認められないものといわざるを得ない。 三 信頼関係の破壊について 右認定のとおり,Aないし被告Bは,著しく低額な供託を15年間余という長期間,漫然と続けていたものであり,その態度自体が背信行為というに足りるものであるが,更に,《証拠略》によれば,昭和50年1月以降,賃貸人側からの頻繁な適正賃料の支払請求や税額増加等の明細に関する説明を受けながら,前記供託を続けたこと,被告Bは,平成2年2月26日,原告らの代理人である有限会社Xに対し,(不足賃料1328万9514円を請求されていることにつき)それまでの供託分を除いて金541万1856円を支払うから残額は放棄されたい,同年3月分以降の賃料を月額金7万2740円とすることを承諾されたい旨の回答をし,これは最終回答であると通告するに至ったこと,右金額はいずれも税額に満たないものであったことがそれぞれ認められる。 右Aないし被告Bの態度は,賃貸人に対して根拠のない経済的損失を強いるものであり,賃貸借関係において通常要求される信義に著しく欠けるものというべきである。 以上の諸点に徴すると,原告らと被告B間の本件賃貸借関係における信頼関係は,破壊されたものというほかなく,原告らの前記契約解除の効力を認めるのが相当である。」裁判例109著しい低額な地代の供託と信頼関係の破壊 「(四)控訴人(編注:土地の賃借人)が,このような本件土地の従前の推定地代額について,どこまで正確な認識があったかは不明であるが,1か月600円という金額は,昭和37年当時の本件土地の推定賃料と比較しても半分近い金額であるうえ,右のような昭和57年当時の推定賃料と比べれば約10分の1の金額なのであるから,少なくとも従前の供託金額から推定される本件土地の従前の賃料を大幅に下回ることは控訴人(編注:土地の賃借人)において
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