デジタル証拠の法律実務Q&A
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Q1 デジタル証拠とは何か8 5  これに反対するのは、安冨潔『ハイテク犯罪と刑事手続』164頁(慶大出版会、2000) 6  米国司法省「Searching and Seizing Computers and Obtaining Electronic Evidence in Criminal Investigations(犯罪捜査におけるコンピュータ捜索・差押え及び電子的証拠の獲得)」と題するマニュアルの付録F1⑶による。http://www.justice.gov/criminal/ cybercrime/docs/ssmanual2009.pdfえの対象となるのは有形物に限られるものと解されてきました5。しかし、コンピュータや磁気ディスク等を差し押さえようとする場合、記録媒体からデータを出力してみないと捜索・差押えの対象となる物か識別困難であることが多く生じています。さらに、コンピュータデータは簡単な操作により移動・改変・削除することができ、しかも、ネットワークに接続されたコンピュータに保管されたデータについては、遠隔的にそれらの操作を行うことも可能となっており、現実に、そうした操作によって冤罪が生じた事件まで発生しています(☞Q4参照)。従前より、こうした事態に対応するための規定の整備が叫ばれ、後述するように法改正で一定の手当てがなされてはいますが、まだまだ、対応困難な問題が多く残されています。 この点、議論が進んでいる米国においては、例えば、連邦刑事訴訟規則41条における捜索・押収の対象となる財産について、「犯罪を犯す手段として設計されたか、犯罪に使用しようと意図されたか、使用された財産」の解釈として、具体的に求める情報を記載する形で捜索・差押えの対象を特定するような運用がなされています。具体的には、麻薬取引の捜索にあたり「麻薬(名前、住所、電話番号、又は特定する情報全て)の発信元に関連した情報全て。容疑者の1995年から現在までのスケジュール若しくは旅行を記録する全ての情報。全ての銀行記録、小切手、クレジットカードの請求書、口座情報、及び他の財政的な記録。」、「X Companyの秘密の1998年5月17日レポート。そのレポートのコンテンツに関するどんな認識可能な部分か概要も含むものであれば、電子的形態、又は、他の形態であるとを問わない。」といった記載で対象の特定を行う運用が確立されています6。 このように、媒体とは独立して存在するというデジタルデータの特性(☞Q2参照)は、証拠方法の取扱いにおける多くの場面で、従前の訴訟

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