第3版実務相続関係訴訟
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7はしがき 本書は,遺産分割の前提問題等に係る相続関係訴訟の実務上の問題点を解説する手引書である。 遺産分割手続の中に持ち込まれる法的紛争においては,昨今,当事者の感情的問題も絡まり,紛糾する事案が増加している。特に,遺産分割の前提問題については,遺産分割手続内で処理できないものが多く,訴訟手続により解決を図らざるを得ないことになり,その争いは深刻である。しかし,こうした訴訟手続の実務に特化して解説された書籍は現在のところほとんどないといってよい。そこで,相続紛争に関係する実務家等の指針となることを目指し,本書の刊行に至ったものである。 本書では,コンセプトとして,読者が実務で本書を活用する際の効率性に重きを置いている。相続に関係する訴訟を,①相続人の範囲に係る訴訟,②遺産の範囲に係る訴訟,③遺言に係る訴訟,④遺産分割協議に係る訴訟,⑤遺留分減殺請求に係る訴訟,⑥遺産分割に関係するその他の訴訟(相続回復請求訴訟,葬儀費用をめぐる訴訟,相続財産の管理をめぐる訴訟,相続財産の収益をめぐる訴訟)の大きく6つに分類し,それぞれの訴訟類型ごとに,紛争により生起される各問題に,裁判官,弁護士や司法書士等が直面した場合に検討すべき事項について,実践的な視点から解説し,訴訟の意義・請求と請求の趣旨・請求原因・主な抗弁,再抗弁等・考えられる立証方法・訴訟法上の問題点等についての具体的な記載例等を示すなどして,実用的な利便性をもたせることに注力した。本来,それぞれの章ごとに1冊分の書籍ができあがるほどのテーマであるが,実務家にとって必要な情報を簡潔に分かりやすく集約させたことで,裁判官,弁護士や司法書士等はもちろん,公証人,書記官,行政書士,税理士,公認会計士等,相続紛争に関係するすべての方々にとって,素早く情報を収集し,活用できる一冊になったと自負している。 本書が,遺産相続に関する紛争を取り扱う方々にとって,実務上の問題の論点の把握やその処理等において参考となり,ひいては紛争解決のはしがき

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