第3版実務相続関係訴訟
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第11遺産分割の意義と平成30年相続法改正3第1 遺産分割概説⑴ 遺産分割 遺産分割は,被相続人が死亡時に有していた財産,すなわち遺産(相続財産)について,相続人等の中の取得者を確定させる手続である。相続人が一人であればその者が遺産を承継することになるし,相続人が複数であっても被相続人が遺言をしてすべての遺産についてそれぞれ特定の者に相続させる等として取得者を定めていれば,遺言の定めに従って遺産が承継されることから,遺産分割を必要としない。しかし,相続人が複数の場合で,遺言がなければ,遺産は相続人の共有状態となっている(遺産共有,民898条)ことから,原則として,個々の遺産の取得者を定めることが必要となり,これが遺産分割である(民906条以下)。 遺産分割は,種々の法律問題や実務上の処理に係る諸問題を含んでおり,既に多数の文献もあるところで,本書は,その前提問題等の民事訴訟に係る解説をすることが主目的であることから,本章においては,そのために必要な限度で遺産分割について解説をするにとどめるものである(遺産分割についての文献は,本章末尾の参考文献参照)。⑵ 遺産分割協議・調停・審判 遺産分割は,第一次的には,共同相続人等の間において,協議(遺産分割協議)により行うことができる(民907条1項)。遺産分割協議が調わないか,協議することができないときは,家庭裁判所に遺産分割の請求をすることになる(民907条2項)。家庭裁判所に対する遺産分割の請求は,遺産分割調停又は審判の申立てをすることになるが,審判の申立てがされた場合でも,多くの場合,家事調停に付する扱いがされている(詳しくは,6参照)。遺産分割概説

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