第3版実務相続関係訴訟
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第11遺産分割の前提問題としての相続人の範囲73第1 相続人の範囲に係る訴訟(概説) 相続は,被相続人の相続財産(遺産)を包括的に承継することである(民899条)。しかし,相続人が複数存在する場合(共同相続)には,相続人が確定しないと,各相続人の相続分が決まらず,遺産を各相続人の相続分に応じて分割する手続である遺産分割の当事者も決まらないことになる。したがって,遺産分割をするには,その前提として,相続人の範囲を確定しなければならない。そのため,遺産相続に関する争いとして,相続人の範囲が争われることがある。 遺産分割の前提問題としての相続人の範囲は,相続により発生する権利義務の帰属主体が誰であるかということである。したがって,本来訴訟事項に属する性質のものであり,最終的には民事訴訟や人事訴訟などの判決手続によって既判力をもって確定されるべきものである。本稿は,遺産相続に関連して相続人の範囲が争われる訴訟について解説することを目的とするものであるが,これに関連する家事調停・審判についても必要に応じて補足して説明する。親族相続法の解釈に関しては,学説等も錯綜しているので,紙面の関係もあり,原則として判例と裁判実務に沿って説明することとする。 なお,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号,以下「改正民法」という。)により民法の相続法が改正された。施行日は,一部(これについては,必要に応じて説明する。)を除いて,令和元年7月1日であり,施行日の前に開始した相続については,改正前の民法が,施行日以後に開始した相続については,改正後の民法が,それぞれ適用される(改正民法附則2条)。相続人の範囲に係る訴訟(概説)

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