第3版実務相続関係訴訟
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2法定相続主義3戸 籍74第2章 相続人の範囲に係る訴訟 民法は,相続人について法定相続主義を採っており(民887条1項,889条1項,890条),被相続人と一定の身分関係がある者だけを相続人としている。民法が相続人としているのは,配偶者相続人と血族相続人(養子縁組を含む。)だけである。我が国においては,被相続人が遺言等により法定相続人以外の者を相続人となる者に指定することはできない。ただし,包括遺贈をすることにより相続人ではない者に相続人と類似する地位を与えることはできる(民990条)。 このように民法が被相続人と一定の身分関係がある者のみを相続人としているため,誰が相続人となるのかということは,民法の規定する相続人としての身分関係があるか否かによって決まることになる。 他方,被相続人と一定の身分関係があり,形式的には相続人の地位にあるとしても,その相続について相続権がない場合がある。被相続人の死後,相続人が相続放棄の申述(民938条)をしたり,相続人に相続欠格事由(民891条1号から5号)がある場合である。そのほかに,推定相続人からの廃除(民892条,893条)がされた場合(家事法39条,別表第一の86の項)にも,その者の相続権は失われることになる。 我が国においては,身分関係は原則として戸籍に登録され,公証されている(戸6条,13条)。したがって,相続人の範囲は,戸籍上被相続人と一定の身分関係があるか否かにより決められることになる。しかし,戸籍は身分関係を公証するものであるが,真実の身分関係を反映していないこともある。つまり,戸籍には相続人となるべき身分関係があると記載されているが,実際には,被相続人との間に身分関係がない場合があり,逆に,戸籍には相続人となるべき身分関係があるとは記載されていないが,実際には,被相続人との間に一定の身分関係があるという場合もあるのである。

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