4人事訴訟事件と家事調停・審判75第1 相続人の範囲に係る訴訟(概説) このような場合には,真実の身分関係を確定し,これを戸籍に反映させなければならない。夫婦親子その他の親族等の関係は,人の身分関係であり,公の秩序に関する事柄であるから,その存否の確認又は形成は訴訟によらなければならない。そのための手続法が民事訴訟法の特別法としての人事訴訟法(人訴1条)である。人事訴訟手続については,項を改めて述べる(後記5参照)。⑴ 調停前置主義 夫婦親子その他の親族等の身分関係の存否の確認又は形成事件を人事訴訟事件という(人訴2条)。家庭裁判所は,人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(家事法別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行い,家事事件手続法第三編に定めるところにより審判をすることができる(家事法244条)。家事調停が成立し,これを調書に記載したときは,確定判決と同一の効力を有する(家事法268条1項)。 家事事件手続法257条1項は,同法244条により調停を行うことができる人事訴訟事件について訴えを提起しようとする者は,まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならないと規定している(人事訴訟事件の調停前置主義)。家事調停をすることができる訴訟事件については,その性質上,法廷で争う前に互譲による円満かつ自主的な解決が望ましいからである。このように人事訴訟事件については,訴訟提起前に家事調停を行わなければならない。ただし,これは,訴訟要件ではない。つまり,調停を経由することなく訴えが提起された場合には,裁判所は,職権で調停に付さなければならないが,調停に付すことが相当でないと認めるときは,そのまま事件を処理できるのである(家事法257条2項)。⑵ 合意に相当する審判 人事訴訟事件は,上記のとおり,親子関係等の人の身分関係という公の秩序に関わる事件であるから,原則として当事者間の合意だけで身分関係の形成又は存否を決めることは許されない。
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