第3版実務相続関係訴訟
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77第1 相続人の範囲に係る訴訟(概説)嫡出子として届出して受理されたような場合に生じることになる。この場合,戸籍上は被相続人の子とされているとしても,真実は被相続人の子ではないから,本来は相続人とはならないはずである。そこで,甲について被相続人の子ではないと主張する者がいる場合,甲と被相続人との身分関係の存否は訴訟により確定する必要がある。このような場合には,被相続人の死後,甲と被相続人との親子関係の不存在の確認を求める訴訟が提起されることになる。そして,判決で甲と被相続人との間に親子(父子)関係が存在しないことが確認されると,甲は,被相続人の死亡時において被相続人の子ではないことになるから,当然のことながら相続権を有しないということになる。イ 他方,被相続人の死亡時において,戸籍に相続人として記載されていないが,実際には相続人であるという場合もある。例えば,被相続人が婚外において子をもうけたが,認知していない場合である(民779条)。この場合,その子が被相続人と身分関係があると主張するには,訴訟により身分関係を確定する必要がある。そのためには,被相続人の死後に,認知(死後認知)を求める訴訟(民787条)を提起する必要がある。これが認められれば,出生のときにさかのぼって被相続人の子であるということになる(民784条)。この場合には,判決により被相続人の子という身分関係が形成されるのであり,その後,これを戸籍法上の届出(戸63条1項)をすることにより戸籍に記載されて身分関係が公証されることになる。ウ 上記の2例の場合には,戸籍に被相続人の子とされている者又は戸籍には被相続人の子と記載されていない者が被相続人との身分関係の存否の確認又は形成がされて身分関係が確定することにより,その者が民法の定める相続人に該当するか否かが決まるわけである。そして,これにより遺産分割の当事者が誰かも決まることになる。エ これに類する例としては,配偶者や養子も相続人となるから,

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