第3版実務相続関係訴訟
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80第2章 相続人の範囲に係る訴訟ウ 判決の対世的効力エ 判決の失権的効力(失権効) したがって,原告適格については,それぞれの訴訟の条文,訴訟の類型及び事案により判断せざるを得ないが,一般論としていうならば,人事訴訟事件の判決が確定すれば対世的効力を有する(人訴24条1項)ため,当該身分関係(夫婦や親子等)の当事者が原告及び被告となるとともに,その他の第三者であっても,問題となっている身分関係の存否等について直接利害関係があるときは,原告となることができるということになる。身分関係の当事者が意思能力を欠くときは,成年被後見人については成年後見人又は成年後見監督人が(人訴14条1項,2項),未成年者については親権者が(民787条),それぞれ当事者となる場合がある。また,本来の当事者となるべき者が死亡したときは,公益の代表として検察官が当事者となることが認められている(人訴12条3項)。 民事訴訟の判決の効力が当事者等一定の者にしか及ばないのに対し(民訴115条1項),人事訴訟の確定判決は,第三者に対しても及ぶ(人訴24条1項。対世的効力)。これは,身分関係は,社会生活の基盤であり,社会秩序を形成するから,人事訴訟事件の判決において身分関係が確定すれば,これを当事者以外の者,つまり,家族や第三者にも判決の効力を確定的に及ぼさないと社会が混乱するからである。この意味で,この判決は公益に関するものということになる。前記の合意に相当する審判がされ,これが確定した場合も同様に対世的効力がある(家事法277条1項,281条,人訴24条1項)。 人事訴訟の判決(訴えを不適法として却下した判決を除く。)が確定すると,その訴訟の原告は,当該人事訴訟において請求又は請求の原因を変更することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事に関する訴えを提起することができない(人訴25条1項)。また,人事訴訟の判決(訴えを不適法として却下した判決を除く。)が確定すると,その訴訟の被告は,当該人事訴訟において反訴を提起することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事に関する訴えを提起することができない(同条2項)。

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