85第2 相続人の地位に係る身分行為の効力に関する訴訟判が提起され,これが確定し,母の再婚後の後夫から嫡出子出生届があった場合は,これに基づき,直ちに父(母の後夫)の戸籍に記載することができる(南敏文監修『最新体系・戸籍用語事典』265頁(日本加除出版,2014年))。また,前婚の離婚後300日以内であって後婚の婚姻後200日後に出生した子(このようなことは再婚禁止期間を経過しない再婚の届出が誤って受理された場合に生じる。)について嫡出推定が重複することから,出生届出は受理すべきでなく,父を定める訴えか,前夫又は後夫からの嫡出否認の訴えにより,父を確定して戸籍の記載をするとされている(青木義人・大森政輔『全訂戸籍法』281頁~283頁(日本評論社,1982年))。ちなみに,最高裁判所は,民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は,憲法14条1項,24条2項に違反しないが,100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は,平成20年当時において憲法14条1項,24条2項に違反するに至っていたと判示した(最大判平成27年12月16日民集69巻8号2427頁)。これを受けて,平成28年法律第71号による改正により,再婚禁止期間は,前婚解消日から100日となった(民733条1項)。 しかし,戸籍上,被相続人(父)の子として届出されていない者は,自分が被相続人の子であるとして,被相続人との親子関係存在確認の訴えを提起することはできない。このような嫡出でない子の場合には,認知によってはじめて法律上の親子関係が発生するものであり,認知されていない段階で親子関係の確認を求めるのは事実関係の確認を求めるものであって,確認の利益がなく,この場合は,被相続人(父)に対する認知請求をすべきだからである(最一小判平成2年7月19日家月43巻4号33頁)。このように父と子との間に生物学的な父子関係が存在することの確認を求める訴訟は,事実の確認を求めることになるから不適法である。他方,母と子との親子関係は,分娩によるとされている(最二小判昭和37年4月27日民集16巻7号1247頁,最二小決平成19年3月23日民集61巻2号619頁)。したがって,親子関係存在確認の訴えという訴訟類型は,理論上あり得るとしても,実務上は少ない。したがって,以下においては,親子関係不存在確認の訴えについて説明することとする。
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