第3版実務相続関係訴訟
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⑵ 民法の親子関係86第2章 相続人の範囲に係る訴訟ア 民法の親子関係の構造イ 実親子関係ウ 法律的な親子関係エ 嫡出子と嫡出でない子(非嫡出子) 親子関係不存在確認の訴えには,いろいろと問題があるが,これを理解するには,まず民法の親子関係がどのような構造になっているのかを検討しておく必要がある。 民法の親子関係には,実親子と養親子とがある。養親子関係が発生するには,養子縁組が必要であるから,養親子関係の存否を争う場合には,養子縁組が有効か無効かが争われることになる。この場合には,養親子関係不存在確認の訴え又は養子縁組無効確認の訴えが提起されるので,親子関係不存在確認請求という場合には,通常,実親子関係の存否を問題にしている。 実親子関係とは,生物学的な関係を基盤とした法律上の親子関係のことである。親子関係については,生物学的な親子関係と法律的な親子関係とを区別しなければならない。つまり,DNA・血液型・身体的な特徴(遺伝形質)等を調べて,両者の間に生物学的な親子関係があることが判明しても,それだけで直ちに法律的な親子関係があることにならない。逆に,後記ウのとおり,法律的な親子関係があるとされていても,生物学的な親子関係がないという場合もあり得るのである。 法律的な親子関係があるかというのは,対象となる「二人」が民法上の「親子関係」にあるかということである。法律的な親子関係について,民法は,まず母と子との関係を分娩という事実により決め,ついで,その子と父との関係を考えるという構造をとっている。ア 概 説 民法は,772条により子を嫡出子と嫡出でない子(非嫡出子)に分けており,嫡出子と非嫡出子とで,親子(父子)関係を争う方法に違いがある(平成25年法律第94号による改正前900条4号ただし書は,嫡出子と非嫡出子とで相続分に差を設けていた。)。つまり,嫡出

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