第3版実務相続関係訴訟
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89第2 相続人の地位に係る身分行為の効力に関する訴訟した非嫡出子の出生届があったときは,戸籍の出生事項に括弧書で「民法772条の推定が及ばない」旨を記載することとされている(平成19年5月7日民一第1007号民事局長通達)。 ちなみに,このような場合には,婚姻成立の日から200日経過前に生まれた場合と異なり,形式上は,民法772条2項により推定が及ぶことになるから,婚姻成立の日から200日経過前に生まれた「民法772条の推定を受けない嫡出子」又は「推定されない嫡出子」についてのみ「推定されない嫡出子」と呼び,婚姻解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれたが,民法772条2項の推定を及ぼすべきではない子については「推定の及ばない嫡出子」と呼ぶこともある。この呼称の方が明確であるので,以下においては,同様に表記することにする。エ いわゆる「300日問題」 実務では,「推定されない嫡出子」よりも「推定の及ばない嫡出子」が問題とされることが多い。つまり,通常,夫婦が離婚する場合には,別居状態が先行し,その間に離婚についての協議等がされ,離婚(協議離婚・調停離婚・判決離婚等)に至ることが多く,どうしても離婚までに時間を要するために,この期間に,妻が他の男性と同居生活をするなどして懐胎に至ることが少なくないからである。こうして懐胎した子の出生の届出をすると,戸籍に離婚したい夫の嫡出子と記載されてしまうため,後日,親子関係不存在確認の訴え等を提起しなければならないことになる。そのため,出生届を避ける傾向がある。これがいわゆる「300日問題」といわれているものである。オ 「推定されない嫡出子」「推定の及ばない嫡出子」と嫡出子否認の訴え このように「推定されない嫡出子」又は「推定の及ばない嫡出子」は,形式上嫡出子であるが,「民法772条の推定を受けない嫡出子」であるから,訴訟で夫との親子関係がないことを明らかにするには,後記のとおり,嫡出子否認の訴えではなく,親子関係

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