第3版実務相続関係訴訟
9/82

5補訂版刊行に当たって 本書は,ほぼ1年前に刊行した「実務相続関係訴訟」の補訂版である。 初版刊行後に遺産分割の実務に大きな影響を与える裁判があった。すなわち,最高裁平成28年12月19日大法廷決定(金法2058号6頁)は,従前の判例を変更し,共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,相続開始と同時に当然に分割されることはなく遺産分割の対象になるという注目すべき判断を示した。この判例が判示するところは,遺産分割の実務や金融機関の実務に大きな影響を与えるばかりでなく,遺言の実務そして遺産分割の前提問題に係る相続関係訴訟の実務にも大きく影響するものと思われる。本書では,本判例に関連する部分のほか,主として,第1章の「第1 遺産分割概説」及び第3章の「第4 預金債権の帰属確認請求訴訟」の項において,本判例の趣旨に即して旧版の記述を改めるとともに必要な解説を加えている。この判例自体は,共同相続された預貯金債権の遺産分割における取り扱いを論じたもので,なお関連する未解明の諸問題が残されていることは,上記解説でも触れているとおりであり,今後の判例の動向や実務の取り扱いにも注目する必要があると思われる。 補訂に当たっては,上記以外にも,参考となる近時の裁判例を紹介するとともに,適宜旧稿の記述を補正し若干の加筆修正を行っている。 今後,債権法・相続法の改正も予定されているところであり,読者諸賢のご叱正を得て改訂の際の参考とさせていただき,より一層の充実を期したいと考えている。 2017年3月編著者 田 村 洋 三(元名古屋高等裁判所部総括判事)編著者 小 圷 眞 史(元仙台家庭裁判所長)補訂版刊行に当たって

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る