2任のほうが良かった」「去年の担任のほうが良かった」と生徒や保護者から比べられるのです。 そのような中で感じたことが、「学級担任が自分のクラスの問題を一人で溜め込んでしまうことは、本当に良くないことなのだろうか」ということです。例えば、自分の担任クラスでいじめが起きたとします。いじめ防止法のガイドラインでは、学級担任がいじめに係る情報を一人で抱え込み、いじめ防止対策組織に報告しなければ法に違反し得ると規定しています。また、筆者も弁護士の立場であれば、いじめに係る情報を学校全体で共有するようにきっと助言するでしょう。でも学級担任の立場はそのような助言で解決するような単純なものではないのです。 ほとんどの学級担任は、「自分が担任するクラスのいじめなら、まずは担任である自分が責任持って解決しよう」と考えるでしょう。なぜなら、クラスの生徒にとって担任は一人しかいない存在だからです。もし、自分が担任するクラスのいじめを見事に担任の力で解決できたら、クラスの生徒や保護者との間に絶大な信頼関係が築けます。反対に、学校全体で情報を共有し、他の先生の力を頼って解決しても、生徒や保護者の目には担任の力で解決したとは映りません。むしろ、一人ではクラスの問題を解決できない頼りない担任として、他の担任と比べられるかもしれません。つまり、学級担任の置かれた立場は、いじめ防止法のガイドラインや弁護士の杓子定規な助言どおりにはいかない立場なのです。 もう1つ、学級担任の仕事が難しいのは「仕事上の優先順位を付けるのが難しい」ということです。それは、学級担任にとってみれば生徒は全て平等に担任クラスの生徒だからです。例えば、A君とBさんがそれぞれ別々にいじめられていることを担任に知らせた場合、どちらを優先すればよいでしょうか。いじめ防止法のガイドラインでは、いじめに係る情報を得た学級担任は、他の業務に優先して、かつ、即日情報をいじめ防止対策組織に報告するように規定しています。しかし、A君とBさんのどちらのいじめ対応を優先すべきかを判断するのは容易ではありま序章 本書を読まれる方へ
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