15_学弁
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5序章 本書を読まれる方へ(4)弁護士の法教育の視点で1年間授業を担当できる? 弁護士業界では法教育活動が盛んです。筆者も法教育は学校内弁護士にとって大切な領域だと考えています。なぜなら、筆者がそもそも勤務校で弁護士資格を持った教師として勤務するようになった理由は、多様な経歴を持つ人材が教師になることで、子どもたちに様々な刺激を与えられるのではないか、という教育効果を期待されたからです。 しかし、実際に弁護士が教師になってみると、弁護士業界が行っている法教育とは似て非なるものであることを実感します。弁護士が「弁護士」として行う法教育は、法教育という特定の分野に特化して、独立した目的と手法により行っている教育活動ですが、弁護士が「教師」として行う法教育はそうではありません。1年間の授業の中の一部にすぎないので、体系的な位置づけや成績評価の視点は必ずしも必要ありません。このことは実際に両方を経験すると、目線が大きく違うことに気づきます。弁護士が「教師」として行う法教育は授業を1年間担当するだけでなく、課程の修了を認定しなければならないため、1年間の授業計画全体を俯瞰した上で法教育をどの時期のどの単元の前後で実施すべきか、どのように授業中の学習態度や学習効果を評価すべきか、といった体系的な位置づけや成績評価の視点が不可欠なのです。 実は、高校では2022年度より新科目「公共」が実施されることになり、これまで以上に弁護士が法教育を介して学校教育に関わることが期待されています。しかし、弁護士の法教育は体系的な位置づけや成績評価の視点が未だに欠けているのが実情です。筆者の現状の法教育への厳しい意見は批判的に受け止められることもあると思いますが、実際に弁護士が教師になって1年間授業を担当してみると、法教育に対する考え方は変化するのではないでしょうか。(5)弁護士は教師同士の人間関係を理解できる? 教育現場を統制する法令の方針は、とにかく「学校問題は組織的に対

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