15_学弁
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6応すること」です。つまり、「『ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)』により情報を共有し、校長のリーダーシップの下で、各教員が協力して組織的に問題解決に向けて対応する」ことが、法律やガイドラインの文言上だけでなく、弁護士がスクールロイヤーとして助言する際にも必ず意識されます。 しかし、こうした方針は、学校という組織の人間関係が健全であってはじめて効果的に機能するものです。筆者が教師として働いて感じることは、教師は一人一人がそれぞれの教育論を持っており、学級担任や部活動顧問に至っては「一国一城の主」に近い立場だからか、このような方針が機能する人間関係が存在する学校はむしろ少ないことです。 弁護士の多くは組織で働いた経験が少ないため、非現実的な組織論に立脚した助言に走りがちです。しかし、スクールロイヤーとして学校に助言する際には、校長のリーダーシップが適切に機能しているか、教頭など管理職が一般教員から信頼されているか、同じ学年の教員同士の人間関係は良好か、ベテラン教員と若手教員の関係は良好か、といった組織内の人間関係を弁護士が的確に理解してはじめて、法律やガイドラインの方針に沿っただけの表面的な助言ではなく、現場の実情に沿う助言をすることができるのです。 以上の5つは、弁護士が教師として働かなければ得られなかった貴重な知見です。本書を読まれる方は、弁護士と教師の価値観がこれほど違うことを念頭に置いた上で、「学校内弁護士」が一向に増えない理由についても、ぜひ考えていただけると幸甚です。序章 本書を読まれる方へ

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