28響を与えることも少なくありません。特に、ほとんどの保護者は事故やいじめなどの紛争の「事実関係の説明」を要求しますが、事実関係の説明を適切な言葉遣いと態度で行うことはなかなか容易ではありません。なぜなら、子どもが学校でトラブルに遭った場合、大抵の保護者は冷静でなく感情的に学校に詰め寄るからです。しかし、一般企業における消費者からのクレーム対応と同じく、学校も冷静に保護者の要求に対応することが必要です。まずは冷静さを保ちながら、ゆっくりと沈痛な語調で対応しましょう。そして、事実関係については、たとえ保護者が感情的に詰め寄ったとしても、冷静にその時点で判明している事実のみを正確に説明しましょう。なお、事実関係の説明の際には、過失や因果関係などの法的な評価を伴う事実は学校のみの判断で保護者に伝えてはいけません(Q12参照)。 ②の教育的責任は、教員という職業の倫理観に基づくもので、教師としての率直な気持ちを児童生徒や保護者に示すことです。実際の教育紛争では、教員の教育的責任が的確に保護者に伝わっているならば、教育紛争の長期化を防ぐこともできます。教え子が事故に遭って責任を感じない教員や悲しまない教員は存在しないはずです。子どもが事故やいじめに遭った場合、保護者は教員に「謝罪」を求めることはよくありますが、「申し訳ない」という謝罪の言葉以上に、「教師として残念でならない」「教師としてできることがあれば何とかしてあげたい」といった教師として率直な気持ちを示す言葉を保護者に伝えるだけでも、感情が和らいで紛争の長期化を防ぐことができる可能性があります。また、状況によっては、教師の正直な気持ちを記した「お見舞いの手紙」などを保護者に渡すこともあり得ます(Q13参照)。 ③の法的責任は、損害賠償や懲戒処分など、法律上の権利義務関係に関する法的効果を生じさせる責任です。道義的責任や教育的責任と異なり、法的責任は学校(教員)だけで対応できる責任ではありません。そのため、保護者が「損害賠償」を請求してきた場合は、校長に回答を一第1章 教育紛争の法的責任
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