15_学弁
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1 実際には、 法的にも 「教員だから」 という理由で他の職種よりも重く処罰される場合もある。例えば、 教員の非違行為に対する懲戒処分では、 他の公務員よりも過重な処分が行われる傾向が指摘されている。山田知代=坂田仰 「公立学校教員に対する懲戒処分の規定要因 : 飲酒運転裁判における 「信用失墜行為」 に焦点を当てて」教育制度学研究19号256~269頁参照。29存させたり、教育委員会の指示どおりに対応するのではなく、必ず弁護士に相談することが大切です。この場合は、すぐには回答できない旨や、弁護士に相談する旨を保護者に伝えても構いません(むしろ、伝えることで保護者側も弁護士に相談する可能性が高まり、弁護士による早期解決が図られる場合もあります)。 なお、法律家は大抵、「道義的責任」と「法的責任」の2つを区別するにとどまり、「教育的責任」という概念は用いません。しかし、筆者は教員兼弁護士の立場から、「道義的責任」や「法的責任」とは区別された、教員の職業倫理から生じる「教育的責任」が存在すると考えています。例えば、生徒が自らの過失により事故を招いたとしても、「自己責任」を是とする社会一般的な道義的責任ならともかく、教師としてはやはり生徒の不幸に対して何らかの教育者としての責任感を感じざるを得ず、この点は教員経験から率直に感じることです。また、一般的な立場の人が行えば批判的に受け取られない行為であっても、教員が行えば「教師らしくない」と批判的に受け取られがちな行為も実際に存在する1ことから、社会通念上も道義的責任と教育的責任を区別する感覚が存在していると考えられます。したがって、本書では「道義的責任」と「法的責任」の2つに区別する法律論ではなく、教員の職業倫理に基づく「教育的責任」も含めた3つに区別する法律論を採用しています。第1章 教育紛争の法的責任

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