15_学弁
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公立学校教員私立学校教員31原則として負う(学校法人と共同不法行為責任を負う場合が多い)表1 教員の個人責任の成否原則として負わず、地方自治体が負う(重過失ある場合は求償義務がある)第1章 教育紛争の法的責任(2) 安全配慮義務違反の責任と不法行為責任の違い 上記①は、主に信義則(民法1条2項)ないし「在学契約」に基づく安全配慮義務違反として理解されています。ただし、信義則に基づく安全配慮義務違反は、契約責任である在学契約に基づく安全配慮義務違反とは理論的に異なりますが、実務上は両者を厳密に区別する必要性に乏しいため、本書では2つをまとめて「安全配慮義務違反に基づく責任」と説明します(教員の安全配慮義務は判例上確立された法律論で、学校事故だけでなく、いじめなどの事案でも適用されます3)。 ①と②は、消滅時効、履行遅滞時期、立証責任などで異なります。実務上は消滅時効の点で②よりも①のほうが被害者に有利なので、①が主張されることも多いです (①は 「本来の債権について履行請求できる時」 から 「10年」 であるのに対し、 ②は 「被害者が損害及び加害者を知った時」 から 「3年」)4。 また、①と②は慰謝料請求権者、注意義務の内容、学校設置者の法的責任においても異なります。まず、慰謝料請求権者について、②の不法行為責任では、被害者である児童生徒本人だけでなく、保護者固有の慰謝料請求権が発生する場合がありますが、①では在学契約の当事者をどう理解するかによって、請求権者が異なります。学説上は、在学契約の当事者は「(小学生以上の)生徒」であって「保護者(親権者)」ではないと解する「生徒当事者説」が多数説で、判例にもこの立場を支持するものがあります5。この説によれば、裁判上の請求権者も保護者ではなく生徒であり、保護者固有の慰謝料請求権は発生しないため、保護者の立場からは②よりも①のほうが不利になります。

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