15_学弁
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34何らの異常もなく、生徒自身も異常を訴えていなかった場合には、結果回避義務は認められず、法的責任は発生しません12。もっとも、予見可能性や結果回避義務を判断する基準は裁判でも様々であって明確ではなく、教員にとっては正確に予測しづらいものです。また、教育裁判では結果回避義務よりも予見可能性の有無で法的責任の成否が決定されることがほとんどであり、中には本来結果回避義務の有無を検討すべき事案であっても、予見可能性の有無で法的責任の成否を決定した事案13もあるため、裁判所が常に「予見可能性」と「結果回避義務」を厳密に区別して検討しているとは断言できません。 筆者は判例のように教員個人の事故に対する具体的な予見可能性を中心に検討するのではなく、事故が起きた教育活動、時間帯、場所の特徴について、教育現場の実情を踏まえて的確に理解し、教員の法的責任がそもそも成立すべき活動、時間、場所であるかを検討した上で、予見可能性を検討すべきであると考えています。 例えば、同じ教育活動中の事故であっても、教育課程上の授業中の事故と、教育課程外の部活動中の事故では、教育課程による児童生徒に対する強制力が異なるだけでなく、当該授業の教員免許を持つ教員が担当する授業と、決して当該部活動の専門家とは限らない部活動顧問が担当する部活動では、教員の専門性の観点からも全く異なる教育活動中に起きた事故であり、両者は決して同質ではありません。この点で、授業中の事故と部活動中の事故を区別せずに、一様に学校事故として検討する判例や民法の多数説の考え方は誤っており、通常の学校事故と部活動中の事故は区別して検討すべきです(後述Q4参照)。 また、授業中の事故と、休み時間中の事故では、教員が事故現場に立ち会うことが想定されていたかどうかで全く異なる時間帯であり、給食の特徴を検討する必要性)第1章 教育紛争の法的責任(4) 学校事故における教員の過失②(事故が起きた教育活動、時間、場所

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