6 最二小判平成18年11月27日民集60巻9号3732頁は、 学納金の返還を請求する7 中野進 『在学契約上の権利と義務』 (三省堂、 1999)108頁も、 在学契約の一方当事者は、学習権の主体としての 「生徒」 と、 学校選択の自由を有する 「保護者」の双方である、 として、 「生徒・保護者当事者説」を採る。このように考えたとしても、在学契約は「有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約」と理解できるため (最二小判平成18年11月27日・前掲注6) 参照)、 その契約当事者性の特殊性を観念することは法律上も妥当である、と考える。しかし、 最高裁は 「大学と学生の間で締結される在学契約」 は 「私法上の無名契約」 である、 としか判示しておらず、高校生以下の生徒との間で締結される在学契約も一般的に 「私法上の無名契約」 と解される、 と判示しているわけでない点に注意しなければならない。なお、学説上は在学契約を私法上の契約ではなく、 公法・私法いずれの性質も有する 「教育法上の契約」として理解する説も有力である(同書94頁)。10 学校事故において教員の法的責任が及ぶ範囲については、 神内聡 『スクールロイヤー 学校現場の事例で学ぶ教育紛争実務Q&A170』 (日本加除出版、2018)131~134頁を参照。表2も同書から抜粋したものである。11 最二小判昭和58年2月18日民集37巻1号101頁。12 最二小判昭和62年2月13日民集41巻1号95頁。13 例えば、最二小判平成18年3月13日裁判集民219号703頁。原審(高松高判平成16年10月29日判時1913号66頁)は、結果回避可能性の有無を検討して教員の過失を否定したが、最高裁は予見可能性の有無のみを検討して教員の過失を肯定した。ける①と②の違いは、実務上あまり重要でなくなる。5 例えば、伊藤進『学校事故賠償責任法理』(信山社、2000)44頁は、小学生以上の生徒の場合は、学校設置者と生徒自身との間に在学契約が存在し、幼稚園や保育園の園児については、設置者と園児の保護者との間に幼児保育委託契約が存在する、と解する。判例でも、東京地判平成18年9月26日判時1952号105頁は、在学契約の当事者は 「生徒」 であって 「保護者」 ではない、 と判示する。ただし、 本件上告審では、 在学契約の当事者が 「生徒」 であるか 「保護者」 であるかを認定しておらず、 むしろ後者であるかのようなニュアンスで判示している (最一小判平成21年12月10日民集63巻10号2463頁)。逆に、 「保護者」 を在学契約の当事者と理解する判例として、 横浜地判平成18年3月28日判時1938号107頁がある。同判例は、 「公立高校の設置者である地方公共団体と在学する生徒の親権者との間には、公法上の在学契約関係が存在」 する、 と判示する。大学生について、在学契約の当事者性を認めている。8 最二小判昭和58年5月27日民集37巻4号477頁。9 実務上も、 「体罰」 を理由とする裁判は、 公立学校であれば国家賠償法1条に基づく請求(例えば、最三小判平成21年4月28日民集63巻4号904頁)、私立学校であれば不法行為に基づく請求(例えば、千葉地判平成10年3月25日判時1666号110頁)、がなされている。37第1章 教育紛争の法的責任
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