4第1章 子ども虐待対応2) 町野朔・岩瀬徹・柑本美和共編『児童虐待と児童保護─国際的視点で考える─』(上智大学出版,2012)11頁。 実際に前記のような通告を受けたときは,児童相談所よりも有効な対応が可能な機関,すなわち,先述の保育所の事案,部活の事案及び性被害の事案は,それぞれ,保育所を指導監督する行政機関の主管課,教育委員会,性被害者支援センターや警察を案内することが考えられます。 もっとも,通告を受けた児童相談所から別の機関を紹介すると,児童相談所は何もしないのかなどと批判を受けることがあります。この点,「児童虐待」に当たらないため児童相談所として通常行っている虐待対応はしないとしても,当該関係機関に児童相談所からつなぐことが考えられます。 また,少なくとも,被害を受けたことで子どもたちは身体的にだけでなく,心理的にも傷ついています。そのような場合,児童相談所の専門性を活用して,心理的ケアを行うことが考えられます。そこで,前記のような通告を受けたときは,児童相談所ができることとして被害を受けた子どもたちの心理的ケアがあることもあわせて告げます。1 平成28年改正によって 児福法1条において,すべての子どもは,条約の精神にのっとり,等しく福祉を保障される権利を有することが盛り込まれました。また,子どもの意見尊重,子どもの最善の利益の優先的考慮も規定されました(同法2条1項)。また,保護者は,子どもの健全育成について第一義的責任を負うことが規定されました(同法2条2項。この点,児童虐待防止法では,4条6項において,親権を行う者が子どもの健全育成について第一義的責任を有することがすでに規treatment),不当な扱い(maltreatment)』であると定義付け」2)ています。基本的に積極的加害行為をabuse(日本では「虐待」と訳されていますが,「悪用する。」,「乱用する。」との意味もあります。)として,消極的加害行為はneglect(前述の4類型では放任虐待)ととらえられているようです。本事例では最近の改正
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