5第1 子ども虐待対応の考え方3) 家事事件手続法(平成23年5月制定)では,子どもが影響を受ける家事審判の手続では,子どもの意思の把握に努め,子の年齢及び発達に応じて,その意思を考慮することが規定されています(家事65条)が,改正された児福法のように,その1条で,子どもの権利を掲げ,2条において,国民の努力義務とはいえ,子どもの意見尊重を規定したことで,子どもの権利としての意見表明権を認めたものと考えることができます。定されていました。)。我が国が条約に批准して以来,実に22年の時を経て,子どもの権利が法律に明記されたことは子ども福祉に携わる者としては喜ばしく思います。さらに踏み込んで子どもの意見表明権(国民の努力義務の定めにおいてであり,「児童の年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され」と定められており,明確に子どもが意見表明権を有することを規定したものではありませんが)に触れたこと,子どもの最善の利益が優先して考慮されるとの内容も画期的な改正になっていると思います。3)このような改正がなされた児福法の下では,一層,子どもの福祉を図ることが最優先に考慮される結果,保護者の意向は子どもの福祉に資する限りにおいて考慮され得るにすぎないと考えるべきです。2 成育基本法の制定 平成30年,「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」(以下「成育基本法」)が制定されました(令和元年12月1日施行)。「成育過程」とは,「出生に始まり,新生児期,乳幼児期,学童期及び思春期の各段階を経て,おとなになるまでの一連の成長の過程」(同法2条1項)を,「成育医療等」とは,「妊娠,出産及び育児に関する問題,成育過程の各段階において生ずる心身の健康に関する問題等を包括的に捉えて適切に対応する医療及び保健並びにこれらに密接に関連する教育,福祉等に係るサービス等」(同条2項)をいいます。 同法の制定以前も,母子保健法,児福法,子ども・若者育成支援推進法,次世代育成支援対策推進法など人の各成長段階に合わせた,分野別の法律はありましたが,成育基本法は,法律名どおり,妊婦(胎児),産婦,成育過程にある者及びその保護者に,切れ目のない,保健,医療,福祉,教育に係るサービスを提供することを目的とした,まさに総合的,包括的基本法です。
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