虐法
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6第1章 子ども虐待対応3 こども基本法 令和4年に,こども施策に関する基本理念等を定めたこども基本法が制定されました。 同法にいう「こども」とは,「心身の発達の過程にある者」(2条1項)とされ,条約や児福法がその対象を18歳未満としていることからすれば,幅広い層の施策に関して基本方針を示したことは評価できます。一方で,子ども(ここでは18歳未満の者を指します。)の権利に関しては,その目的(同法1条)において,「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」,「心身の状況,置かれている環境等にかかわらず,その権利の擁護が図られ」と,その基本理念(同法3条1号)において,「全てのこどもについて,個人として尊重され,その基本的人権が保障される」などと規定され,子どもの権利を前提とするような表現が見られます。しかし,「こども」を広くとらえたことで,子どもの権利が抽象化され,個人の尊重や基本的人権の保障などという憲法上子どもに限らずすべての人に当てはまる表現に溶け込まされてしまっているように見えるのは残念に思います。同法があくまで基本理念を示したものであるとの位置づけならば,今後,条約の国内担保法として子どもの権利を具体的に表した,子どもの権利法を別途制定することを願います。 なお,前記2の成育基本法(5頁)は妊娠期からの基本法ですが,これについて,こども基本法では触れられていません。同法と同時期に制定されたこども家庭庁設置法では,成育基本法11条1項に規定する成育医療等基本方針の策定・推進に関することが所掌事務として掲げられています(こども家庭庁設置法4条1項14号)。 子どもに関わる法令では,子どもの養育者について様々な呼称が使われています。同じ呼称でも各法令でその内容が異なっていたり,異なる呼称でも実務や一般的に同じような意味で使われていたりして,現場で混乱してしまうことCOLUMN保護者・親権者・親・父母・家族

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