虐法
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601終わりに〜児童相談所の現在と未来〜1 介入と支援の狭間で 現在,子ども虐待対応の現場では,児童相談所は子どもの安全確保のためにちゅうちょなく一時保護を行うなど積極的な介入(ここでいう「介入」とは,児童相談所に付与された強制的権限に基づく処分を指します。)を求められます。実際に,子どもの死亡事例では,児童相談所が,子どもが死亡する前に一時保護をしなかったことで批判を受けることはよくあることです。そのため,全国の児童相談所の中には,子どもの安全に少しでも危惧(心配)があれば,子どもの安全を害する可能性を推認させる具体的な事情がなくても一時保護をする(身体的虐待の疑いのある子どものきょうだいには特に虐待を受けたことを疑う又は虐待を受けることが想定される事情がなくても一時保護する)など強権的に対応する傾向が見られます。 一方で,子どもの安全確保のため一時保護をしたものの,児童相談所が理由なく親子分離をしたとして,不当な人権侵害であるとの批判を浴びることもあります。実際に,子どもを長期的に家庭から分離すべきとして家庭裁判所の承認を得ようと児福法28条の申立てをしたところ,1年以上後に家庭裁判所がこれを却下したことでもって,それまで一時保護を継続したことだけでなく,当初の一時保護すら誤った処分であったかのように批判されることがありました。そして,児童相談所は,子どもが家庭から分離されるような事態にならないよう,家庭養育原則に従って家庭支援も求められます。 このように,児童相談所は,一時保護についても,相反する方向性を要請されており,単純化すれば,介入と支援のいずれの方向性を採るのかという非常に厳しい判断を求められている状況にあります。この点,子どもの死亡事例をまったくなくすことを絶対的指標として求めようとすると,少しでも不適当な養育が認められれば,とにかく子どもを一時保護することを強行す終わりに~児童相談所の現在と未来~

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