虐法
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終わりに〜児童相談所の現在と未来〜602るという方向性に向かってしまいかねません(すでにそのような方向性に傾いているように見えます。)。当然ですが,子どもを家庭から分離すれば,子どもが保護者の虐待によって死亡したり,傷ついたりすることはまったくなくなるでしょう(施設や里親宅において死亡したり,傷ついたりする可能性は否定できません。)。しかし,それだけであり,それは子どものためではなく,結局批判を受けたくない,周りの大人のためでしかないと思います。 本来,前述の介入と支援の二律背反のように考えるのではなく,個別の事情に応じて判断すべきことは承知していますが,客観的に見ると,児童相談所が置かれている状況は相反する要請の狭間にあって日々子どもの利益擁護のために励んでいるのではないかと思います。 このような状態が適当ではないことは明らかです。そのため,これまでの子ども虐待対応の体制を大幅に変革する必要がありました。2 子ども福祉関連法令の大改正の波間で 最近の議論において,子ども福祉に関連する法令の大改正が進められようとしています。 子どもの権利保障としての意見表明支援,こども家庭庁の新設,子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターとの一体化,子ども福祉に関わる新資格(子ども家庭福祉ソーシャルワーカー)の創設,子どもの自立支援における年齢制限の撤廃などです。 特に,児童相談所に関わるものとしては,一時保護開始時の司法審査の導入,児童相談所における第三者評価の促進,児童福祉司の増員などがあります。 これらの改正によって,児童相談所は,その体制について少なからぬ変革が避けられません。 筆者は,以前から,児童相談所に,前記1のような介入と支援という二律背反の状態にあることで,虐待対応に無理が生じているのではないかという考えの下,児童相談所を虐待対応に特化して,子どもの保護に関する業務を行う機関とするか,又はそのような業務を児童相談所から分離して別の機関を創設してこれに担わせることを訴えてきましたが,今回の改正論議の報告

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