お墓にまつわる法律実務
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Q1.相続と祭祀承継1612 祭祀財産 祭祀財産、すなわち祖先を祭るために必要な財産として、民法は、「系譜」・「祭具」・「墳墓」の3種類を挙げています。⑴ 系譜、祭具、墳墓 「系譜」とは、歴代の家長を中心に先祖以来の系統(家系)を表示するもの、すなわち、家系図や過去帳などを指します。 「祭具」とは、祖先の祭祀、礼拝の用に供されるもの、すなわち、位牌、仏壇、仏具、神棚などを指します。 「墳墓」とは、遺体や遺骨を葬っている設備、すなわち、墓石、墓碑、埋棺などを指します。 また、墓石等の所在する土地(墓地)の所有権や墓地使用権も墳墓に含まれます(大阪高決昭和59年10月15日判タ541号235頁)。しかし、墳墓に含まれる墓地の範囲は、墓石などが存在する墳墓と密接不可分な範囲に限られる(広島高判平成12年8月25日判時1743号79頁)とされています。⑵ 遺体・遺骨 遺体・遺骨のうち、既に墳墓に納められている祖先の遺体や遺骨は、祭祀財産であるお墓と一体的に扱われます。 これに対して、被相続人自身の遺体ないし遺骨については、「物」であるか、誰に「所有権」が帰属するかなどについて、説が分かれています。判例は、祭祀主宰者を所有者としています(本章Q8参照)。3 祭祀承継者の決定 祭祀財産は、前述のように共同相続の財産には入らず、それとは別に、祖先の祭祀を主宰すべき者がいる場合には、その者が承継するとされています。⑴ 被相続人の指定 まず、被相続人が祭祀主宰者を指定していれば、その人が承継します(民法897条1項ただし書)。 生前に指定することもできますし、遺言で指定することもできます。

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