お墓にまつわる法律実務
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162指定の方式に限定はなく、遺言以外の書面や、口頭で指定することも可能です。明示・黙示も問いません(本章Q4参照)。 祭祀主宰者の資格には制限がなく、相続人か否か、親族関係の有無、氏の異同なども問いません(大阪高決昭和24年10月29日家月2巻2号15頁)。 ただし、お墓について、都立霊園などでは規則により承継人は「相続人に限る」と定めている場合もあり、注意が必要です。⑵ 慣習 次に、被相続人が指定をしていない場合には、慣習に従って祭祀承継者を決めます(民法897条1項本文)。 慣習は、被相続人の住所地の慣習を指します。出身地や職業に特有の慣習があれば、それによるとすべき場合もあります。 また、民法の趣旨からみて、家督相続の立場をとっていない現在の民法施行後に新たに育成された慣習を指すものと考えられています(大阪高決昭和24年10月29日家月2巻2号15頁)。 なお、相続人全員が協議して承継者を指定するということも認められるのではないかと思われます。⑶ 家庭裁判所の指定 被相続人の指定がなく、慣習も明らかでない場合には、家庭裁判所が祭祀承継者を定めます(民法897条2項)。 相続人が家庭裁判所に調停や審判を申し立て、指定を求めることになります。 家庭裁判所が祭祀主宰者を決定するに当たっては、被相続人との血縁関係、過去の生活関係・生活感情の緊密度、被相続人の意思、祭祀承継者の意思及び能力、職業、生活状況等を総合して判断するとされています(大阪高決昭和59年10月15日判タ541号235頁)(本章Q2参照)。⑷ 関係者の協議による指定 民法には、相続人やその他の関係者全員の協議(合意)によって祭祀承継者を定めることができるとする規定はありません。裁判例の中には、被相続人が相続人らの協議によって祭祀承継者を定めることとする第5章 お墓と相続

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