お墓にまつわる法律実務
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164 また、祭祀承継者は、祭祀財産を自由に処分することができると理解されています(広島高判昭和26年10月31日高民集4巻11号359頁)。 お墓に誰の遺骨を入れるかについて、慣習や墓地の管理規則等で制限されていない限り、祭祀承継者が決めることができます。 お墓を承継することは、墓地の使用権も承継することになります。5 遺産の相続との関係 祭具などの祭祀財産と、他の遺産の相続との関係はどのようになるのでしょうか。 まず、祭具などの祭祀財産は、相続分は遺留分の算定の時に、相続財産に含んで計算されません。相続税の対象にもなりません。 また、相続放棄をした人でも、相続人でない人でも、祭祀承継者となることができます。 さらに、祭祀承継者が祭祀主宰者の立場にあることから当然に、相続財産を増やされたり、減らされたりするということはありません。祭祀主宰を理由に、特別に相続分を与えられたり、当然に他の相続人よりも多くの遺産の配分にあずかるといった権利はないとされた判例(前掲東京高決昭和28年9月4日)があります。 もちろん、被相続人が遺言で、祭祀主宰者の相続財産を増やす又は減らすと定めることは、自由にできます。6 遺言作成時の注意 遺言を作成する場合、お墓などの祭祀財産の承継は、祭祀承継に関するものとして遺言事項となります。 これに対して、葬儀方法や埋葬方法についての事項は付言事項となります。これらは、たとえ遺言の中に記載しても法的効果は生じません。そのため、自分の希望を尊重してくれる人を祭祀承継者に指定することが重要だといえます。第5章 お墓と相続

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