お墓にまつわる法律実務
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Q2.祭祀承継者が決まらない場合167活感情の緊密度、承継者の祭祀主宰の意思や能力、利害関係人の意見等諸般の事情を総合して」判断するのが相当である(大阪高決昭和59年10月15日判タ541号235頁)としています。 さらに、「祭祀は、…死者に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情により行われるべきものであるから、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち、他方、被相続人からみれば、同人が生存していたのであれば、おそらく指定したであろう者」である(東京高判平成18年4月19日判タ1239号289頁)という考え方が示されています。 特に、被相続人の推定的な意思、祭祀財産の管理の状態・経緯のほか、他の相続人の意向といった要素が考慮される場合が多いと思われます。 判例としては、相続人である弟妹ではなく20年来生活を共にした内縁の妻を祭祀承継者と指定した事例(東京高決昭和24年10月29日家月2巻2号15頁)、生前生計を異にしていた長男・次男・長女ではなく同居をして共に農業に従事していた次女を祭祀承継者として指定した事例(名古屋高決昭和37年4月10日家月14巻11号111頁)、同居して家業を継ぎ墓地を管理していて、長男以外の相続人も希望している三男を祭祀承継者と指定した事例(大阪高決昭和59年10月15日判タ541号235号)、墓碑の建立者として刻印をさせた次女を、被相続人の意思を推認して承継者として指定した事例(長崎家諫早出審昭和62年8月31日家月40巻5号161頁)などがあります。

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