同パ
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で同性婚が認められて以来10数年を要する闘いであった。現在,世界で同性婚を公認する国は,2001年のオランダを皮切りに,20か国を超えるまでになった。欧米諸国では,同性婚が認められるまでに,セクシュアル・マイノリティは,社会の中で勇気をもって自分たちの存在を明らかにし,声をあげ,法廷闘争など挑んできた。その結果,まずは身近な自治体や職場などで理解を広げ,これまで無視されたり,否定されたり,差別され,不利益を受けてきたことの差別禁止や差別撤廃に対する粘り強い闘いを繰り広げてきた。その後,同性パートナーやセクシュアル・マイノリティに対する差別の撤廃だけでなく,夫婦や家族として扱うという登録パートナーシップ制度の導入などの動きが広がっていった。特にキリスト教の諸国では,同性愛を犯罪として処罰するなど刑罰で禁圧されるという苛酷な歴史もあった。 このような中で,日本でも,ようやく2015年4月,渋谷区が男女平等と多様性を尊重する社会を推進する条例を制定して,同年11月には同性パートナーに証明書を発行した。また,世田谷区も,2015年7月には同性パートナーの宣誓供述書の写しに区長の受領印を押すことで,2人が同性のパートナーであることを公的に証明することを発表し,同年11月には受領証の交付を開始した。これにならって,2016年4月から三重県伊賀市,2016年6月から兵庫県宝塚市,2016年7月から沖縄県那覇市でも,同性パートナーの証明書が出されることになった。さらに,外資系の日本IBMでは,2016年1月から「IBMパートナー登録制度」を設け,同性パートナーの登録ができ,登録パートナーとの結婚,育児等で特別休暇をもらえたり,慶弔見舞金などを受け取れることにした。東洋経済社が行うCSR調査でも,2016年には,LGBTに対する差別禁止等の基本理念や不利益取扱いの禁止を定める企業が173社,社内研修や福利厚生など積極的な取組をする企業についても,146社が「あり」と答えるなど大きな広がりを見せ始めている。 このような広がりと注目が集まる中,本書は,多様な性のかたちが存在し,多様なLGBTの人々が自分らしく生きることができるような社会を作り,当たり前に生きていること,生まれてきたことを喜び,堂々と誇りをもって暮はしがきii

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