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 渋谷区では,同性パートナーを対象とした証明書発行要件として,公正証書の作成を求めた。特に,任意後見契約や共同生活の合意書を公正証書にしなければならず,費用と手間暇がかかる。区が証明書をもつ当事者に家族向けの区営住宅への入居を認めたり,事業者が認めれば,病院での手術への同意書への署名も可能になるなど,限られた範囲では家族や夫婦と同等に扱うこともできる。渋谷区の場合には,性的少数者の人権尊重も規定されており,差別や人権侵害がはなはだしい場合には,事業者名を公表することもできる。 渋谷方式は,条例成立のために区議会での決議が必要であるが,その代わり,同性パートナーの証明書の効力としての便宜供与の範囲もある程度確実に提供できるメリットがある。これに対して世田谷方式は,当事者が署名した宣誓書の受領証に公印を押すだけのもので,簡便で,費用や手間暇もかからない。その代わり,世田谷方式では,区が家族としてお墨付きを与えたとまでは言い難く,どの程度の公証力があるかは不明確なところがある。2015年12月,発行開始から1か月後に,渋谷区は2組,世田谷区は11組の発行となった63)。やはり,手軽で費用もかからない世田谷方式に人気が集まったのかもしれない。 2015年12月に,兵庫県宝塚市の中川智子市長も,世田谷方式を採用し,市内部での要綱を作成し,パートナーシップの認定書(受領証)を発行することに決めた。ほかにも,市役所では,LGBTを象徴する虹色のバッジを市職員が胸元につけたり,トランスジェンダーに配慮して,市施設の「多目的トイレ」を「だれでもトイレ」に変えることにした。また,LGBTに関する電話相談窓口(週1回)を2016年6月に開設し,市立小中学校の図書室や保健室にLGBTの書籍を置き,児童生徒たちに電話相談窓口があることを周知することにした64)。 三重県伊賀市も,2016年4月から,渋谷区,世田谷区に続き,全国で三番aya.lg.jp/kurashi/101/167/1871/d00142701_d/fil/regulations1.pdf)63)2015年12月6日付朝日新聞朝刊27頁。64)2015年12月4日付朝日新聞朝刊(神戸)29頁,2015年12月8日付読売新聞朝刊(兵庫)30頁。第1 LGBTの法的保護とパートナーシップ制度21

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