らせるような法制度や社会的な支援の仕組みを考えるきっかけとなればと企画されたものである。本書は,まず初めに,諸外国の同性婚やパートナーシップの歴史と現状をわかり易く伝え,次いで,渋谷区,世田谷区など身近な自治体がなぜ,このようなセクシュアル・マイノリティへの差別を禁止し,同性パートナーシップ制度を設けるに至ったのか,その経緯,背景などを改めて振り返り,実務や制度の運用の実態や課題についても詳しく触れている。また,渋谷区や世田谷区などの制度設計に関わった弁護士,公証人,窓口担当者など実務に携わる人々,渋谷区長,世田谷区長,区議会議員などの身近な政治家,身近な市民としてのセクシュアル・マイノリティの皆さんの生の声や切なる思いをどのように社会,政治や行政に届けることができたのかをリアルにお伝えしたいと思っている。 私たちは決して1人では生きていけない。誰かの助けや支えが必ず必要である。身の回りにいる夫婦,親子,パートナーという身近な家族や親しい友人・知人の支えや理解なしには,生きていくことはできない。最近自治体や企業で生まれたパートナー登録制度は,当事者1人1人が勇気を振り絞り,声なき声を集め,それがやがて力となりうねりとなって制度へと結実したものである。本書は,何よりも当事者の皆さんが切実な声をあげてくださったこと,そして,身近な自治体の首長,議員,職員の皆さんがこれを受け止め,弁護士や公証人など法律専門職の皆さんが理解を示し,このような皆さんのチームワークと熱い志の上に,どのような工夫や知恵を出しながら,セクシュアル・マイノリティにも温かく,男女平等と多様性を実現する社会を作っていくべきかの道程を示す細やかな試みである。 本書は,執筆者として,幅広い形で,この問題に精通している研究者,実務家,当事者などにお願いをし,広く海外の経験や取組から,日本での先駆的な自治体の取組や実践から理論とともに,制度創設のエッセンスを析出し,これをさらに応用し発展させることを狙うとともに,今後取組を始めたり,検討を開始したいと考える自治体関係者,政治家,弁護士,裁判官,公証人など実務家,法曹を目指す人,一般の人々にも広く読んでいただきたいと思はしがきiii
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