本書の序章「総論」の「LGBTの法的保護とパートナーシップ制度」では,LGBTの概念や実態について触れ,憲法第24条との関連で,日本において同性婚が法的に許されるか,アメリカ合衆国でのドメスティック・パートナーシップ制度の生成と展開状況,自治体から始まった取組の特色と多様性,この制度が同性婚の容認につながったことなどを明らかにした。また,性同一性障害の人々が具体的に直面している様々な問題やLGBTと子どもたちの問題,特に,小さいころから不安や緊張を強いられている実情について取り上げられている。さらに,本章では,最後に,最近の渋谷区や世田谷区などの身近な基礎自治体や民間企業の中でのセクシュアル・マイノリティへの積極的な取組等も紹介されている。 第1章の「諸外国のパートナーシップ制度」では,まず,ドイツ・オーストリアのパートナーシップ制度が取り上げられた。ドイツは,2001年に生活パートナーシップ法を制定し,現在では,改正を経て,親子関係を除き,法律上の夫婦とほぼ同様の権利義務を有するまでになっている。ドイツでは,社会民主党や同盟90/緑の党の連立政権が誕生して,生活パートナーシップ制度の導入の議論が連邦議会で始まったが,1999年にハンブルク市で同性パートナーシップの宣誓・登録制度が開始された。オーストリアでも,2010年に同性カップルに対する登録パートナーシップ法が施行され,養子縁組や生殖補助医療の利用による親子関係についても認められつつある。一方で,ドイツでもオーストリアでも,いまだ同性婚は認められていない。 フランスとベルギーは,同性カップルだけでなく,男女のカップルに対しても利用できるパートナーシップ制度を置くところに特色がある。ベルギーも,2000年から共同生活をするカップルに対して,最小限の財産的保護を目的とする法定同居制度が導入された。しかし,立法当初は,子どもを産んだり育てたりすること,相続権などが認められないなど法的地位の差異が大きかった。フランスで1999年に導入されたPACS法も,民事連帯契約として,相互扶助,居住保護,社会保険などで夫婦と同じように扱われるが,他方,総 括277総 括
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