同パ
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盤を求めて,2007年の「世田谷区男女共同参画プラン」があげられた。特に上川区議の求めに応じて「性的少数者への理解促進」が施策として明記されたことは大きかった。また,性的少数者に対する相談窓口の明記,区職員を対象とする研修会なども実施され,一般区民に向けた啓発講座なども開催された。世田谷区では,2013年には区の最上位計画の中に「性的マイノリティ」が位置づけられ,学校や教職員についての対応力強化や実態把握も進められた。2014年8月の区長や生活文化部長らへのプレゼン,2015年1月の世田谷区ドメスティック・パートナーシップ・レジストリーの始まり,勉強会の開催を経て,3月には当事者から要望書が提出された。渋谷区の同性パートナーの証明書発行の条例制定の動きに呼応した世田谷区の迅速な対応と区長の前向きな発言などにより,一気に同性パートナーの証明書の制度化への検討に入った。2015年4月の庁内検討プロジェクトチームの発足,条例か,要綱か,宣誓書の写しと受領証の交付という世田谷方式に至る経緯,今後の課題等が詳しく解説されている。 同性パートナーシップ制度の今後の課題では,日本でのまだまだ根強い誤解と偏見,LGBTを無視した法律と社会制度,同性カップルの被る法的不利益,人権の問題について触れ,自治体の発行する証明書や宣誓受領証の同性カップルの権利拡大の可能性,病院での看護や医療同意,生命保険の受取人や商品・サービス等で,家族として扱われることの意義についても検討されている。そして,同性だけでなく,異性カップルに対しても,婚姻に代わる選択肢として使える可能性についても言及する。同性パートナーシップ制度が同性婚や自由な生き方を尊重する社会につながると期待する。 第3章では,「同性パートナーシップ制度運用の実際」と題して,まず,渋谷区と世田谷区の制度施行と運用の現状について,区の制度担当者による解説が行われている。渋谷区では,男女平等・多様性社会推進条例という形式で,多様性や性的少数者の人権の尊重と差別の禁止が謳われており,同性のパートナーシップの証明書を区が発行することが定められた。証明書の発行要件として,任意後見契約公正証書と合意契約公正証書の2種類が求められたのは,婚姻と同様の実質を備え,信頼性の確保のためとされる。また,総  括281

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