ハラ対
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⑴ Yらの法的責任① Y1に対する請求ア 不法行為責任(民法第709条) Y1がXに対し,ⅰ異性関係を執拗に尋ねたこと,ⅱXと性交渉したいという趣旨の発言をしたこと,ⅲチークダンスを強要したこと,ⅳ無理やりキスをし,Xの胸を触ったことのいずれも,Xの意思に反する性的な言動であって,セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」といいます。)指針に定める「環境型セクハラ」に該当します。しかし,これらのセクハラ行為が不法行為を構成するには,違法性を有するまでに至っていることが必要です。この点,ⅳについては,性的行動を過度に要求するものであり,後述の通り,刑事責任を問われる行為であることから,違法性を有することは明らかです。他方で,ⅰからⅲについては,その各行為の具体的な態様,継続性,被害者と加害者との関係等に鑑み,社会的見地から不相当とされる程度に至っている場合には違法性が認められるといえます。 また,Y1がXに対し,アルコール度数の強い酒を飲むことを命じたことは,職務上の地位が優位にあることを背景に,業務上全く必要のない行為を命じるものですが,これが単なる迷惑行為を超えて,いわゆるパワハラとして不法行為を構成するといえるには,違法性を有するまでに至っていることが必要です。本件では,Y1の飲酒の命令が取引先接待後になされたものであることから,Xの酩酊の程度や体調が当時どうであり,それをY1が認識していたか(又は容易に認識し得たか),Y1が飲酒を命じた態様などを考慮し,違法性を有するまでに至っているか判断する必要があります。 以上の事情を検討のうえ,Xは,Y1に対し,上記一連の行為に関し,不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償を請求することが考えられます。第2章 ハラスメントの法律相談の対応42主退職を選ばざるを得ません。Y1やY2に対し,どのような請求ができるでしょうか。

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