第2章 ハラスメントの法律相談の対応44います(労働契約法第5条)。 セクハラ行為に関しては,均等法及びセクハラ指針に基づき,使用者は,セクハラに関する対応方針を明確にし,従業員に周知・啓発したり,防止のための相談体制を整備したり,セクハラ行為が発覚した場合には迅速かつ適切な事後対応を行うなど,事案に応じて具体的な対応をすべき義務があります。また, 労働者がセクハラ行為について相談を行ったこと又は使用者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として,当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしない義務があります。これらの義務に違反した場合には,使用者は,債務不履行責任(民法第415条)及び不法行為責任(同法第709条)を負います。 本件では,Y2は,他の従業員や事情を知る者からの事情聴取等を行わず,Y1による事実でない説明を鵜呑みにし,Xの相談にまともに取り合うことなく,Xが主張するY1の行為がないと判断し,適切な措置を何らとりませんでした。これらのY2の行為は,従業員のセクハラ行為について事実関係を正確に確認することを怠り,Xの犠牲により職場関係を調整しようとしたものですので,職場環境配慮義務に違反するといえます。したがって,Xは,Y2に対し,職場環境配慮義務違反を理由として,債務不履行責任(同法第415条)又は不法行為責任(同第709条)に基づき,損害賠償を請求することが考えられます。⑵ Xの損害 本件におけるXの損害としては,治療費・通院費,慰謝料,弁護士費用のほか,自主退職した場合には,退職による逸失利益が挙げられます。① 治療費・通院費 Y1のセクハラ行為とXのPTSD発症との間に因果関係がある場合は,Xは,実際に負担した治療費や通院費を損害として請求することができます。② 慰謝料 Y1のセクハラ行為の期間や程度に鑑み,Xが被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金額を請求することとなります。本件のように,強制わいせつ罪
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