ハラ対
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第1 職場におけるハラスメントの具体的相談事例と法的責任45に当たるような身体的接触があった場合には,慰謝料として100万円以上が認められることが珍しくありません(裁判例集ⅰ参照)。③ 弁護士費用 代理人に委任した場合には,弁護士費用も損害として請求することができます。弁護士費用については,判決では請求額の1割程度の範囲で認められることが一般です。 したがって,損害額の合計額の1割程度を目安として,弁護士費用を請求することが考えられます。④ 退職による逸失利益 Y1のセクハラ行為と退職との間に因果関係が認められるかが問題となりますが,Y1のセクハラ行為(特にⅳ)はXに多大な精神的苦痛を与えるものであり,Y2はY1のセクハラ行為を防止する何らの対策も講じなかったことから,Y2の具体的対応によっては,Xが職場に居づらくなり退職に追い込まれたということができる場合があります。 したがって,その場合には,Xは,退職後新たに就労するまでの期間における逸失利益(Y2に就労していれば得られたであろう給与相当額)を損害として請求することができます。 なお,就労にかかる期間については,Xの病状など諸事情に鑑み,実際に新たに就労するまでにかかった期間ではなく,相当期間に制限される場合があります。⑶ 本件における留意点 本件のような強制わいせつに該当する行為によるセクハラは,それ自体極めて違法性が強い行為であり,不法行為に該当することは明らかです。しかし,このような行為は密室で行われることが多いことから,訴訟など法的手続の場においては,加害者が当該行為自体を否認することがよくあります。 その場合,被害者と加害者の言い分が真っ向から異なることとなり,裁判所は,いずれの主張が信用できるかを,各々の主張の一貫性,具体性,セクハラ行為前後の経緯等を考慮して判断します。この点,被害を受けた直後の

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