参照)第2章 ハラスメントの法律相談の対応46被害者の言動は,セクハラ行為を認定する一つの間接事実です。例えば,被害を受けた直後に,被害者が心療内科や精神科を受診したこと,同僚や友人等の第三者に被害を訴えたことなどです。医師に被害状況を説明した内容が記載された診療録や第三者へのメールなどがこれを基礎づける証拠となります。また,被害者が日常的に手帳に出来事を記載している場合は,当該手帳の記載の信用性も高いといえます。 なお,被害者の主張の信用性を否定する事情として被害者がその場で明確に拒絶しなかったことや被害を受けた後に第三者に相談をした事実がないことが考慮されることがありますが,職場におけるセクハラは,上司と部下という支配従属関係を濫用した性的言動であり,対等な関係の場合の合理的行動を期待するべきではありません。そのため,性被害に遭った被害者の合理的行動を前提としてセクハラ行為の事実の有無を判断すべきです(裁判例集ⅰ7参照)。⑷ 労働者災害補償保険 セクハラ行為により精神障害を発症した場合,労働災害(以下「労災」といいます)と認定されれば,労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいます)による補償を求めることができます(詳細については,第3章第2の2参照)。補償の範囲は,療養補償給付(診察や治療,手術,薬剤など),休業補償給付,障害補償給付,遺族補償給付,葬祭料などです。⑸ 参考裁判例① 岡山地方裁判所平成14年11月6日判決(労判845号73頁。裁判例集■2 使用者は,被用者に対し,労働契約上の付随義務として,信義則上被用者にとって働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務を負っており,セクハラ行為に関しては,使用者はセクハラに関する方針を明確にして,それを従業員に対して周知・啓発したり,セクハラ行為を未然に防止するための相談体制を整備したり,セクハラ行為が発生した場合には迅速な事後対応を
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