第1部家事事件における保全1 はじめに2011(平成23)年に家事事件手続法が成立し,2013(平成25)年に施行され,家事審判法(以下,「家審」という)は廃止された(整備法3条)。旧法では,審判前の保全処分は本案事件である家事審判事件が係属していなければ発令ができないという制約(家事審判法15条の3第1項)があった。しかし,家事事件手続法(以下,「新法」という)では,審判の申立てをしていなくても,調停事件の係属中であれば,審判前の保全処分の申立てをすることが可能になった(家事105条1項)。もっとも,民事保全法上および人事訴訟法上の保全処分は,訴え提起前にも可能であるが,審判前の保全処分は,審判ないし調停を申し立てている場合のみに認められ(保全処分の付随性,家事105条1項),引き続き本案が係属することが形式的要件である。手続自体は独立のもので,別個の事件番号が付される。なお,立法の変遷は,脚注の文献に詳しい1)。2 審判前の保全処分の類型審判前の保全処分の内容は,「仮差押え,仮処分,財産の管理者の責任その他の必要な保全処分」と定められている(家事105条1項)。以下の4類型に分けて説明することが一般的である。第1類型は,財産の管理者を選任し,または事件の関係人に対し事件本人の財産の管理もしくは事件本人の監護に関する事項を指示することができるとする財産の管理者の選任等(家事126条1項,134条1項,143条1項等)の1)金子『一問一答』206頁,170頁ないし172頁,金子『逐条解説』343頁,梶村太市『実務講座家事事件法』(日本加除出版,新版,2013)78頁ないし79頁。2)金子『逐条解説』341頁,梶村前掲注1)79頁ないし80頁。⑴ 4つの類型2)第2 審判前の保全処分5第2 審判前の保全処分
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