第1部家事事件における保全⑶ 審理手続Q1 婚姻費用の保全39106条1項は,審判前の保全処分の申立ては,その趣旨および保全処分を求める事由を明らかにしてしなければならない,と定めています。申立人は,保全処分を求める事由の疎明をなす必要があります(家事106条2項)。ウ 本案認容の蓋然性保全処分においては,本案が認容される蓋然性が必要です。つまり,本ケースでは,婚姻費用の分担の請求が認容される蓋然性が必要です。本ケースの場合,夫(相手方)は1か月前に家を出て,給与の振込口座も変更されており,4歳と1歳の子を抱えていることから,生活費の支払いが必要と思われますので,請求が認容される蓋然性が高いといえます。エ 保全の必要性強制執行を保全し,または子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときに,保全処分の申立てをすることができます(家事157条1項)。本ケースの場合,夫(相手方)は1か月前に家を出て,給与の振込口座も変更されており生活費が支払われておらず,4歳と1歳の子を抱えていることから生活が困難になっていると思われますので,急迫の危険を防止する必要性が高く,保全の必要性はあると思われます。オ 申立ての趣旨「相手方は申立人に対して,婚姻費用の分,現金として平成○年○月から本案審判が効力を生ずるまでの間,毎月○日限り,月額○円を仮に支払え」という主文になります。申立てをした後,申立人に対する裁判官の面接(場合によっては電話連絡)により,申立ての内容や疎明資料に不明な点や不足がある場合は補正が求められます。保全裁判所は,必要があると認めるときは,職権で事実の調査および証拠調べをすることができます(家事106条3項)。⑷ 効力の発生時期審判前の保全処分は,その緊急性および暫定性から,審判を受ける者に告
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