7_家事執
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第1章2本書で扱う家事事件とは,家事事件手続法244条に定める家庭に関する事件のほか,広く家族に関する事件を含むものとする。家事事件の保全は,家事事件を普段から多く扱う弁護士ですら,頻繁に取り扱うものではなく,たまに受任をするととまどいがちである。そこで,本章では,家事事件の保全手続の基礎・概要を明らかにする。家事事件の保全手続で,問題になるのは,そもそもどのような申立てが可能か,どの法律により保全手続を行うのか,どの裁判所に申し立てるのか,管轄を決めるうえで本案事件の性質はどういうものか,人事訴訟に附帯する審判事項についての管轄はどこにあるか,一般の民事訴訟とは異なり,例えば後見人の選任のように申立てによらず職権による事件開始もありうる場合に,保全もまた申立てではなく職権により開始する場合があるのか,必要な疎明の程度はどのようなものか,保証金が必要か,保証金額について,特に離婚に伴う財産分与や慰謝料請求を本案とする場合に男女間の経済力の差を反映して民事訴訟事件の保全よりも低額で認められる傾向があるか,仮差押えの対象財産の種類により保証金額に差があるか,その程度はどのくらいか,監護者指定など金銭の問題でない事案における保全の必要性とはなにか,特に子の引渡し請求のように保全と本案で結論が異なれば子が親の間を行き来しなければならない事案において本案事件への付従性を迅速性との関連でどこま第1 はじめに保全総論

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