7_家事執
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3 民事保全における被保全権利の蓋然性と審判前の4)金子『逐条解説〔第2版〕』424頁ないし426頁。5)金子『一問一答』Q82,170頁ないし172頁,金子『逐条解説〔第2版〕』425頁。6民事保全の本案手続では,一定の給付請求権の存否が判断の主たる対象であるため,その保全処分の発令を受けるには,当該給付請求権(被保全権利)が客観的に存在することの蓋然性を疎明する必要がある。これに対し,家事審判の本案手続,例えば,婚姻費用の分担に関する処分の審判では,一定の請求権の客観的存否が問題となるのではなく,婚姻費用に関する権利義務関係の形成の当否および形成される内容が判断の対象となる。そこで,その保全処分の発令を受けるには,被保全権利の存在の蓋然性に換えて,本案審判において一定の具体的な権利義務が形成される蓋然性を疎明する必要がある。旧法下では,そのような蓋然性が認められるためには,少なくとも本案の家事審判事件が係属していることが必要とされた。しかし,調停不成立と同時に審判に移行し,調停の申立てのときに審判の申立てがあったものとみなされる(家事272条4項)等の両手続の関連性および連続性により,調停の申立てをもって審判の申立てがあったものに準じて考えられることから,家事事件手続法では,調停申立てと同時に審判前の保全処分を申し立てることが可能になった。なお,調停の申立てがあったときにされた審判前の保全処分の本案事件は,当該調停が審判手続に移行した後の審判事件であり,調停事件ではない5)。調停の申立てがあったときにも審判前の保全処分の申立てをすることができる事項は,以下のとおりである。◦夫婦間の協力扶助に関する処分(家事157条1項1号)◦婚姻費用の分担に関する処分(同項2号)◦子の監護に関する処分(同項3号)保全処分における権利義務形成の蓋然性4)

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