2 婚姻費用の請求手続⑴ 婚姻費用の分担額は夫婦の協議で決めることができます。⑵ 本ケースのように,当事者間で協議ができない場合は,家庭裁判所に婚姻費用分担について調停もしくは審判を申し立てることが考えられます。婚姻費用分担事件の多くは調停から始まります。最初から審判を申し立てることもできますが,調停に付されることも多くあります(家事274条1項)。調停においては,いきなり保全処分の申立てをすることでいたずらに紛争が激化することを避け,暫定的に義務者が支払可能な金額を支払うことで合意し(暫定払の合意),その後,最終的な合意形成を目指すことがあります。この場合,調停や審判で最終的な金額を決める際に決まった金額と暫定合意した金額との差額を調整することになります。1)判タ1111号285頁,1114号3頁。2)司法研究報告書70輯2号,裁判所ウェブサイト「養育費・婚姻費用算定表」掲載。40従前,簡易算定表(「簡易迅速な養育費等の算定を目指して―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」1)による算定方式が定着していましたが,社会実態の変化を受け,統計資料や制度等を更新し,算定方法の一部を改良した「改定標準算定方式・算定表(令和元年版)2)が活用されています。しかし,調停や審判による解決には一定の時間がかかりますので,上記解 説1 婚姻費用とは夫婦はその資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担すると定められています(民760条)。婚姻から生ずる費用を「婚姻費用」といい,具体的には,夫婦とその間の子どもの生活に必要な通常の衣食住の費用のほかに,子どもの養育費,教育費,交際費および医療費などが含まれます。
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