3 早急に生活費を確保する必要性がある場合についてこのような場合には,審判前の保全処分として,婚姻費用分担の審判や調停を申し立てると同時もしくは申立て後に,婚姻費用分担の審判を本案として,婚姻費用の仮払いの仮処分(仮の地位を定める仮処分)を申し立てることが考えられます(家事157条1項2号)。4 婚姻費用の分担の保全処分について⑴ 保全処分の申立てア 管轄3)金子『逐条解説〔第2版〕』430頁。のような暫定払もなされず,権利者(本ケースでは妻と2人の子ども)の生存が脅かされるといった緊急性がある場合は,調停や審判を申し立てるだけでは不十分です。審判前の保全処分の管轄裁判所は,本案の審判事件が係属している家庭裁判所,または,本案の審判事項について調停申立てがあった場合はその調停事件が係属する家庭裁判所となります(家事105条1項)。婚姻費用分担調停の場合は,原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所となりますが(家事245条1項),審判の場合は,夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てが可能なため(家事150条3号),夫の住所地がわからない本ケースでは妻の住所地を管轄する家庭裁判所に審判を申し立てることになると思われます。イ 保全処分申立ての要件審判前の保全処分の申立ては,その趣旨および保全処分を求める事由を明らかにしてしなければならず(家事106条1項),申立人は保全処分を求める事由を疎明する必要があります(家事106条2項)。保全処分を求める事由には一般的に本案認容の蓋然性と保全の必要性が含まれます3)。Q1 婚姻費用の保全41
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