相手方(夫)の陳述を聴取する必要があります(家事107条)。聴取の方法は裁判所の適正な裁量に委ねられていますが,実務上多くの場合,調停や審判の期日と同時または先行して,裁判官と面接等の審問期日を入れ,双方から主張書面や疎明資料を提出して審理が行われます。また,裁判所は,必要があると認めるときは,職権で事実の調査および証拠調べをすることができます(家事106条3項)。もっとも,審理のなかで義務者が裁判所の説得に応じ,暫定的な支払いを開始した場合は,実務上,緊急性はなくなったとして保全処分の申立ては取下げで終了することも多くあります。保全処分をする場合,民事保全手続と同様,違法な保全処分によって相手方が被る可能性のある損害を担保するため,担保を立てさせることができます(家事115条,民保14条1項)。担保を立てさせるか否かは裁判所の裁量に委ねられますが,仮払いを受けないと生活を維持できないことが保全の必要性を根拠づけることになりますので,その性質上,担保を立てさせることは相当でなく,実務上も立てさせないのが一般的です。婚姻費用の仮払い仮処分は,その緊急性および暫定性から,即時抗告によって確定しなかったとしても,審判を受ける者に告知することによって効力が生じ(家事109条2項による同74条2項ただし書の適用除外),本案審判の確定によって失効します。また,審判を受ける者に保全処分を認識され,強制執行の目的を達することができなくなることを防ぐため,同人への告知前でも強制執行することができますが(家事109条3項,民保43条3項),保全処分が送達された日から2週間を経過すると執行できなくなります(家事109条3項,民保43条2項)。なお,本ケースにおいて,夫の住所地がわからないままであれば,保全処分は就業先に送達することができます(家事36条,民訴103条2項)。Q1 婚姻費用の保全43⑶ 担保⑷ 保全処分の効力
元のページ ../index.html#35