社会の多様な変化にともなってライフスタイルも大きく変わりつつある中,家族のあり方や家族がお互いに対して何を期待するのかといった家族間の意識にも変化が生じ,家族をめぐる紛争は多様化するとともに複雑かつ深刻なケースが増加してきています。家族や家庭は,人が生活をしていくうえでその基礎ともなる重要な場であるだけに,そこに生じた紛争や問題が人々の生活に与える影響は大きく,可能な限り速やかに,そして何よりも適切に確実に解決されなければなりません。家事事件手続を取り扱う家庭裁判所の役割はますます重要になってきています。それと同時に,当事者から相談を受け事件解決の手続を受任して実際に家族の紛争の解決に向けて手続を進めていく弁護士には,法が予定している手続を十二分に理解し,これを活用して,それぞれの紛争事案に最も適切な解決を創り出していくことが強く求められています。そして,弁護士がこの役割を果たすためには,調停や審判といった本案手続だけでなく,それぞれの紛争が抱える事情に応じて,保全手続や執行手続についても適切に活用することがこれまで以上に重要になってきています。こうした考えから,今回,家事事件における保全と執行手続そして履行確保に焦点を当てて本書を刊行することになりました。本書は,第1部家事事件における保全,第2部家事事件における執行,第3部履行確保,第4部渉外家事事件と大きく4部構成になっています。そして,第1部保全と第2部執行では,家事事件における保全・執行それぞれの全体構造と特徴などを俯瞰できるよう第1章総論で解説をするとともに,第2章では各論として,実務で頻繁に遭遇するケースを具体的にあげて,それぞれのケースでどのように保全手続や執行手続を利用することができるのか,また利用する際の留意点などを説明しています。家事事件を受任してその解決に向けてどのように手続を進めるべきか悩んだときには,ぜひ本書を手にとって,保全手続や執行手続についてももう一 iii初版刊行にあたって
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